※2020年11月24日追記しました
箕面市白島の大宮寺の森の調査体験に参加した際、「ナラ枯れ」についてのお話を伺うことができました。
「ナラ枯れ」って?
このような木に貼られた張り紙を見たことがある方もいらっしゃるかと思います。
この画像は小野原の春日神社で撮影した画像ですが、同様の張り紙は勝尾寺の参道など山中でも見かけます。
張り紙には「ナラ枯れ」について書かれていて、木の幹にはビニールなどが巻かれています(張り紙がない場合もあります)。
「ナラ枯れ」とはカシノナガキクイムシ(通称カシナガ)という昆虫が媒介するナラ菌とよばれる菌により、ナラ類やシイ・カシ類などの樹木が枯れてしまう病気です。
なぜ枯れるの?
カシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の成虫は木の幹に穴をあけて入り、木の中で生活します。
木に穴をあけると集合フェロモンを出してたくさん仲間を呼びます。多数の成虫が1本の木に集中して穴をあけて入ります。
この時、カシナガは木の中に菌の胞子を持ち込みます。木の中で菌を栽培して餌にするのです。
木の中で産卵し、孵化した幼虫は菌を餌にして木の中で成長します。
この過程で、ナラ枯れの原因となるナラ菌の増殖により、木の細胞が死んで水を吸い上げなくなって枯れます。
木の中で羽化して成虫となったカシナガは菌を持ってその木を脱出し、また別の健全な木に穴をあけて菌を持ち込み、繁殖活動を行います。
このようなサイクルでカシナガはナラ枯れの原因となるナラ菌を木から木へと運びます。
※カシナガの生態については大宮寺の森の会の方のお話に加え、日本応用動物昆虫学会のサイト『むしコラ』に詳しい記載がありましたので参考にさせていただきました。
「ナラ枯れ」の特徴は?
「ナラ枯れ」という名称ですが、被害を受ける木は「ナラ」と呼ばれる木に限らず、シイやカシ、クリといったブナ科の樹木だそうです。特に被害が多いのがミズナラ・コナラなのだそうです。
「ナラ枯れ」の特徴は、夏なのに葉が赤色や茶色に変色していたり枯れていたり、木の幹に多数の小さな穴があってフラスとよばれる木屑などが散乱・堆積していることだそうです。ただ、別の病気で枯れているのかもしれないし、幹の穴は別の虫の可能性もある、とのことでした。
大宮寺の森で見た「ナラ枯れ」被害木の幹には、カシナガがあけた多数の小さい穴があり、その周辺にフラスが散乱して、葉は茶色く枯れていました。
NPO法人みのお山麓保全委員会の方のお話によると大宮寺の森の枯死木はカシナガのマスアタック(多数の成虫が一本の木に集中して穿孔)によるナラ枯れではないとのことでした。
このような状態になった木が元通りに復活することはほとんどないそうです。
「ナラ枯れ」を防ぐには?
木の中で羽化したカシナガの新成虫は、菌を持ってその木を脱出し、また別の健全な木に入って繁殖活動を行います。
これを放置しておくと「ナラ枯れ」は拡大してしまうので、カシナガのいる木の幹にビニールなどの覆いを巻いて新成虫の脱出を防ぎ新たなナラ枯れ被害を防ぎます。
このような覆いの外側が粘着テープになっていて、集合フェロモンを利用してカシナガを捕獲する方法もあるそうです。
箕面市では
箕面市でも市の公式サイトでナラ枯れ被害発見の協力を呼びかけています。
詳しくは箕面市のホームページ >産業・まちづくり>緑化>「ナラ枯れ」被害の発見にご協力ください!のページをご覧ください。
箕面市のナラ枯れ被害については、NPO法人みのお山麓保全委員会公式サイトに掲載されている「ナラ枯れ防止グループ」の活動報告で、箕面市でのナラ枯れの調査とナラ枯れ被害防止に向けた取り組みについて、詳しい記載がありましたので参考にさせていただきました。
NPO法人みのお山麓保全委員会の方が2020年11月現在の箕面市のナラ枯れの状況を教えてくださいました。2009年からナラ枯れ被害防止の活動を続けていてここ数年はほぼ終息状況にあり、現地確認しながら防虫シートを回収している段階なのだそうです。
おわりに
「ナラ枯れ」の特徴を知ることはナラ枯れ被害の拡大防止につながります。
夏なのに葉が変色していないか、枯れていないか、木に小さな穴がたくさんあいていて、フラスが散乱していないか。
木の様子を普段は意識して見ていませんでしたが、公園や森林や山道を歩くとき、少し気にして見てみようと思いました。
たくさんの人の目で木を見守って、ナラ枯れ被害が減ることを願っています。
※「ナラ枯れ」については大宮寺の森の会の方のお話に加え、『国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所』のサイトにも詳しい記載がありましたので参考にさせていただきました。
参考パンフレットPDFファイル ⇒ 『ナラ枯れの被害をどう減らすかー里山林を守るためにー』製作:森林総合研究所関西支所「ナラ枯れ」パンフレット製作委員会