(この記事は2020/03/21に公開したものを2022/05/12加筆修正し再投稿しています)
キク科ヤブタビラコ属。花期は3~5月。タビラコ(田平子)とかホトケノザともいうそうです。
このお花の名称をめぐっては『牧野富太郎植物記』に大変おもしろいお話があります。
二つのホトケノザ
春の七草の「ホトケノザ」はこのキク科のタビラコ(コオニタビラコ)であり、今日「ホトケノザ」とよんでいるシソ科のホトケノザ(サンガイグサ)ではありません。
このキク科のタビラコは、若苗の頃に葉を四方に出し地面にはりついている姿が仏様の蓮華の座に似ていることから「仏の座」とよばれたそうです。
二つのタビラコ
ややこしいことにタビラコという草がもう一つ別にあったそうです。それは今日のキュウリグサ(ムラサキ科)です。
昔小野蘭山という学者がムラサキ科のタビラコ(キュウリグサのこと)を春の七草のホトケノザだといったことが伝わったためだそうです。
「タビラコ」という名称は元来キュウリグサという名があったムラサキ科の植物にゆずられることとなり、キク科のタビラコをコオニタビラコというようになったそうです。
二つのホトケノザ・二つのタビラコがあると混乱するので、植物学者の牧野富太郎博士はシソ科のホトケノザをサンガイグサ、キク科のホトケノザをタビラコ、ムラサキ科のタビラコをキュウリグサとよぶことにしたそうです。
わたしはコオニタビラコなどという必要はなく、タビラコはタビラコでよいと思っています。
タビラコが二つあってはまぎらわしいというなら、ムラサキ科のタビラコを改名したらよいと思います。このムラサキ科のタビラコをわたしはニセタビラコ、あるいはキュウリグサとよぶことにしました。あかね書房『牧野富太郎植物記1野の花1』より